起床は4時半。さて,今日はどうしようかとしばし思案。昨夜,晩飯食いつつ,なでら女房と明日どうするか話したら,明日は寝ているとか。折角,靴買ったのに,寝てるとはどういうことだ!?ったく,遊びにどん欲さのない奴はしょうがないなぁ(:-D)。仕方がない。昼頃には晴れそうな GPV 予報だったので,一人で山に出かけることにした。さて,どこに行くか?
候補の一つが「飯森山」。日中ダムの辺りから登るらしい。飯豊をどかんと目前に見てみたい。そしてもう一つが「祝瓶山」だ。数年前から登ろう,登ろうと思いつつ果たせていない。米沢市内から眺めるピラミッドのような姿はとても 1400m ほどの標高とは思えないほどの偉容だ。別名,東北のマッターホルン。これだけで登る理由になるのではないか?
結局,祝瓶山に登ることにした。と決めたのはいいが,あそこは登山口(長井側)までのアプローチが長いし,そこまでの道が細く荒れているので,車の運転がストレスフルなんだよね。なでら女房など,隣に乗っているだけで多分ギャーギャー言いそうな道。一度だけ,真夏に偵察のために出かけたが,本当にこの先に登山口があるんだろうなと不安になった頃に登山口に当る「祝瓶山荘」に到着した。入山カードが置いてある電話ボックスがあった。メジロアブの数が凄まじく,車外に出たものの,アブにまとわりつかれて,その辺りを歩き回るような余裕もなく,這う這うの体で車に逃げ込み,どさくさに紛れて飛び込んできたメジロアブを10匹ほども車内で退治したのは5年ほど前だったか,..。時の流れは速いものだ,..。
7時頃にコンビニで食料を調達してからひたすら車を走らせる。長井ダムの先の記憶が大分曖昧で,走りながら,こんな道走ったっけ?道を間違えたかなぁ?と不安がよぎったが,木地山ダムが見えてきて,「ああ,そうだ,ここだ!」と思い出して,さらに車のすれ違い不可(いや〜,本当に神経使う道だ)の細い道をどんどん先に進む。途中からオフロードになり,「営林署の管轄だから許可車以外ここから入るな」なんて看板を眺めつつさらに進む。「祝瓶山荘」の看板を目にして,しばらく走るとようやく到着。営林署管轄の林道のほぼ終点に祝瓶山荘がある。

5年のうちに風力発電設備などが備えられたようだ。今日の午後には市内やら遠方やらからお客さんが集まって,明日は祝瓶山の市民登山があるとのこと。既に何人かの泊まり客がいるようだ。ふと,思ったことは,帰りの道で,こちらに来る客の車と出会ったらすれ違いが面倒だなぁということ(苦笑。駐車場には既に5台ほどの車が駐車していた。入山カードをみると何グループか既に入山している様子。早いグループで6時半頃に入山とか。7時半頃にも入山したグループがいた。現在,8時半。カードに必要事項を記入して,荷物を背負い,林道を歩き始める。この2週間,周囲に人がいない状態で山道を歩いてないので,むしろ何か新鮮である。

林道終点に到着。この先には,..

野川に架かる吊り橋が,..。なんだか,傾いでるし,揺れが酷いし,..。調子に乗ってスピードを上げて渡ろうとして,揺れの酷さにちょいとビビる。橋を渡ったあとは,ブナ林の中を快適に進む。それにしても,魚のいそうな渓流だ。ここを釣り上ったら楽しいだろうなぁ。

橋を渡った先の林道途中で見える祝瓶山。あの頂上に今日は登るのかぁ。

ちなみに,予定のコースはこんな具合。おおよその距離は 10km で,獲得標高差は 1000 m ほど。所要時間は休憩を含めて7時間くらいか。やがて,辺りは全てブナになり,足下には苔むしした石がゴロゴロした林の中へ。太古の森という感じで,ナウシカの風情(笑。石の上のコケは出来るだけ踏まないようにして進む。



ブナの肌とか,苔むした石とか,ブナの倒木に生えたキノコとか,色付いた紅葉とか,..。いや〜,いいな!あまりキョロキョロしていると蹴躓きそうになるが。40分も歩くと,桑住平の分岐に到着。真っすぐに進むと赤鼻尾根らしい。ここから左に進み,小沢を渡り,昔キャンプ場だったと思しき広場を通り,祝瓶山の東側の尾根コースに向かう。

キャンプ場(?)のブナの巨木の幹には「昭和二十八年五月**日」の彫り込み。そんな頃から,ここには人が入り込んでいたのか。ここから2回ほど沢の渡渉を繰り返す。瀬から飛び出して深みに逃げ込む 20cm ほどのイワナを数匹見かけた。ここまで来れば,キャンプと釣りを組み合わせて楽しめそうだ。禁漁なのかな?

渡渉が終わった辺りから,踏み跡は沢筋を離れてブナ林の中を急激に高度を上げ始める。きっつい。この辺りから,汗がダラダラ流れ始める。しかも,一人なのでついつい頑張るものだから呼吸はゼーゼー。10分に一度ほど立ち止まりポールにもたれて息を整え再び登ることを繰り返す。どうも,適当に手を抜いてゆっくりと登るというのが出来ない性格らしい。今日はなでら女房がいなくて一人なので,余計に修業モードに入り込んでしまうようだ。

しばらくするとブナ林を抜け出して,背の低い雑木に覆われた,急登の細い尾根に出る。前方にはこれから登るコースとガスの掛かった祝瓶山の山頂。左右には切り立った尾根から沢へと崖が落ち込み,向かい側の沢の源流部の断崖が見えている。もう少し雲が高ければ,これは素晴らしい眺望だろうな。それにしても,左側が急斜面へとざれている片斜面とか,狭い岩場の,両手も使っての登りとか危なっかしいところばかり。疲れて、踏ん張りが利かずによろけたりしたら,あっという間に数十メートルは転がり落ちそうなところが多い。改めて気持ちを引き締め注意をそらさぬようにして進む。

こんな急勾配の踏み跡が山頂までつづく。

尾根の登り途中で一息吐いて振り返った景色。多分,大朝日方面だと思うが,..。

左手のコカクナラ沢の源流部の尾根と断崖。振り返ると,遠くに出発点の祝瓶山荘がポツンと見える。

遠く木地山ダムも見えている。雲がなければ,この方向に磐梯山なども見えるようだが,..。

次第にガスの掛かった頂上に近付く。

登っている尾根の右手側の尾根。ヌルミ沢源流部なのかな?
とにかく切り立った細い尾根の上の急勾配を進むので高度感が半端ない。本当に 1400m の山か?と何度も思った。この辺りから前方から女性のハシャギ声が時折聞えるようになる。先行者に追いついたようだ。

とうとうガスの掛かった辺りに突入。薄いガスを通して頂上直下の岩壁を見る。まさに岩山。晴れていたら凄い迫力だろうな。

竜胆を見つけた。
この辺りからは,「え?ここ登るの?普通の岩壁ヤン!(笑」という箇所が,連続して出現する。短い距離だけど,三点確保できちんと岩の部分を登らねばならないような箇所も多数。手掛かりがないところは,思わず草を掴んでしまうが,抜けたりしたら大変なことに,..。

角度で 50度ほどありそうな岩斜面を登ること数回。頂上直下のロープが設置してある箇所を超えたら,数メートルほど進んで頂上到着である。汗まみれである。ここまで約3時間。頂上には,若いご夫婦と5人ほどのおばさまグループがいた。辺りは真っ白で何も見えない。さらに,寒い,..。汗が冷えてきた。ダウンジャケットも持ってきたが,全身汗まみれなので取り合えずウィンドブレーカ代わりに雨具を着用。もっとペースを抑え気味して,発汗抑えないとこれからの時季やばいなぁ。

取り合えず記念写真をセルフタイマーを使って撮影(笑。

三角点にタッチ

腹ぺこなので,まずは腹ごしらえ。カップ麺とおにぎり2個とクリームパンなどを食す。風が吹くとかなり寒い,..。登りでの発汗が多すぎて,持参した水2リットルでは足りなかったみたい。まあ,最後は沢水でも問題あるまい。
晴れていてば360度のパノラマなんだろうが,生憎ガスっていて何も見えない。そんな訳で頂上からは早めに撤退。au の携帯が繋がるのにはビックリポン(笑。計画では赤鼻を回って降りる積もりだったが,若いご夫婦からの情報で,尾根を下ったところの赤鼻への分岐を示す道標が倒れていて見落とすかも知れないとのこと。ムムム,..とは言っても,登ってきたコースは岩壁を這って降りる箇所が多数あり,正直遠慮したい(若いご夫婦は,来た道を戻るコースにチャレンジするとか。お気を付けて)。もう一つのおばさまグループに話を聞いてみれば,やはり,赤鼻を経由して帰る積もりだと。でも,初めてなのでコースは詳しくないと。う〜ん,どうすべぇ〜と思っているところに,降りようとしているコースからシニアの三人組が登場。聞けば,赤鼻から登ってこられたと言う。帰りのコースはどちらかを訊けば,同じコースを帰るとか。では,途中の赤鼻の分岐までご一緒してもらうことに。そろそろ出発するかというときに,一瞬だけガスが晴れた。大朝日やら新潟方面の景色が凄い。飯豊は残念ながらわからなかった。大朝日とか飯豊が冠雪した頃の晴れた日の景観は見事だろうなぁ。

一瞬だけ晴れた西の方角。飯豊連峰はもう少し左側かな?

こっちが飯豊方面かなぁ?あ,飯豊は南か,違うな(苦笑。見えているのは,足駄山とかなのかな?

大朝日岳の頂上が少しだけ見えた。直ぐに隠れてしまったけど。

下山を始めた頃にガスが晴れてきた。

ピークから北(北西?)に向かう尾根道(鈴振尾根?)。ここを進めば,小国の五味沢からの登り口に至るらしい。尾根を挟んで右と左では植生が違っているのか,右が黄葉,左が紅葉である。

赤鼻への分岐付近からの祝瓶山山頂。先行されていたシニアのお三方に分岐を教えて頂く。後続のおばさんグループを待って,尾根筋を降る。

赤鼻へと至る尾根からの祝瓶山

赤鼻まで向かう尾根から振り返った祝瓶と鈴振尾根。真ん中辺りに下山する登山者が数人。

赤鼻までの尾根。あちこちに岩場もあった。



赤鼻への尾根からの景色

細い尾根道はやがてクマザサに覆われた道になる。
もう一度登り返して(結構辛い),赤鼻の分岐に到着。

分岐の道標はクマに八つ当たりされていた。「オレの縄張りに余計なもの立てるんじゃねぇ!」って感じかな(笑。
ここで,頂上で会った3人のシニアの方々のお仲間のお二人と出会い,少し話をした。途中お一方がギブアップして,もうお一方が付き添って、ここまで戻られたとのこと。三人のことを訊かれたので,途中で食事中だったとお伝えした。お二人のうちのお一方は祝瓶山に5〜6回ほど登っておられるとか。低いけどいい山だと繰り返し口にされていた。シニア世代の方々はなにか落ち着いた雰囲気で,山をのんびりと愉しまれている感じ。道具(靴とか)も年季の入った渋さがある。サイクリングの場合もそうなのだが,長く愉しんでいる方はどこかに余裕を持ってゆったりとした雰囲気を感じる。そんな感じで,道楽も仕事もこなせれば,人生一段上の階層に至れそうに思うのだが(違:笑。なでら男は未熟な故,到底そんな境地には至っておらず,..(笑。そんなこんなで,一人で山を歩いていると,いろいろな思いが頭をよぎる。
ここからしばらく赤鼻尾根を降る。急斜面で降りが大変だった。

鎖場やら,..

ロープ場やらが次々と,..。まあ,なくても降れはするけど,結構脚には来た。

赤鼻尾根の途中から祝瓶山を眺める。一番左の尾根(空との境界線)を登って,右端の尾根(紅葉で紅くなっている)を降りてきたということなのかな?
ブナ林の中を歩いてきて,結構大きな沢の渡渉をしたところで(二つの沢の出会い部分)小休止を取る。沢の水でタオルを濯いだり,顔を洗ったりして一息吐いていると,先ほどのお二方が降りてこられた。挨拶して見送って,さて、行くか!と出発すると,少し先が桑住平の分岐だった。先着のお二方が沢の水を飲んでいるので,水の切れたなでら男もそれに倣う。元キャンプ場の水場でもあり,上に何もないので問題ないとのこと。汗のかき過ぎで脱水に近い状態だったので助かった。ボトルに一本ほどを一気飲み。
お先に祝瓶山荘を目指す。来たときに通った,ブナと苔むしした石の林を通過して,ようやく吊り橋に到着。来るときはおっかなびっくりだったけど,いろいろなところで身体が(不安定な状態に)馴染んだようで,橋の上で写真を撮る余裕もあった。

傾いでいるのでなかなかスリリングだ(笑。
そして3時半少し前に祝瓶山荘に到着。明日の市民登山に参加する人達が大勢で BBQ を愉しんでいた。世話役のような感じの方に,これからこちらに向かってくる方はどれくらいいるのか訊ねると,ほとんどいないんじゃないかな?という返事。で,もうお一方と山のことなどを少し話した。今日はよかっただろう?というので最高だったと応える。電話ボックスの中の入山ノートに下山時刻を書き込んで終了。近くの沢でタオルを絞って全身汗にまみれた身体を拭いて,パンツまで総取り換え。サッパリして帰途に就く。
帰途は3台の車とすれ違い。タイミングがよく苦労せずにすれ違えた。一台は多摩ナンバーだったので,明日の登山の方かも知れない。5時過ぎに帰宅。いや〜・・いい山だった。低いけど,山の要素をコンパクトに凝集させたという感じ。来年もまた行きたい。今度はヒメサユリの時季に。

帰宅して風呂に入って,一杯やったら,..テンテンテン。きっと山頂にいる夢でもみているのだろう(笑。
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